Webサイトの個性はどこまで必要か―ゆまラボの変更から考えるブランディングと使いやすさ

Astroの初期テンプレートから始めたゆまラボの変更を振り返り、Webサイトの個性をどこに出すと使いやすさを壊しにくいか、逆に独自性を強くしすぎたときに起きる問題を考える。

執筆:ゆまラボ運営者

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Webサイトの個性はどこまで必要か―ゆまラボの変更から考えるブランディングと使いやすさ

Webサイトに個性は必要なのか。

ゆまラボを作り始めた直後は、Astroのブログテンプレートに近い画面が残っていた。サイトとしては表示でき、記事も読める。ただ、サイト名はAstro Blogのままで、Astro公式のSNSリンクやサンプル要素も残り、何を扱うサイトなのかは伝わりにくかった。

その状態から、サイト名、ヘッダー、トップページ、記事一覧、ロゴ、カテゴリ表示などを少しずつ変更している。現在はトップを開けば「WEB制作 × AI」「つくる、試す、共有する」が先に見え、その下に連載、カテゴリ、注目コンテンツ、新着記事が並ぶ。

この過程を振り返ると、個性はあった方がよい。ただし、すべてを独自デザインにする必要はない。むしろ操作まで独自化すると、分かりにくさや保守の手間が増える。

ゆまラボでは、サイトを見分ける部分には個性を出し、操作方法は一般的なWebサイトのままにするくらいが合っている。

テンプレート感を消すより、サイトの目的を見せる#

最初に行ったデザイン見直しでは、noteの余白、本文幅、記事一覧などを参考にした。ただし、noteのロゴや固有UIを再現する方針ではない。

第7回 Astroブログのデザインを見直す―noteを参考に修正方針を決める で確認した修正前画面には、次の要素が残っていた。

  • サイト名がAstro Blog
  • Astro公式SNSへのリンク
  • トップページに記事への入口がほとんどない
  • フッターにテンプレートの文言が残る
  • 日本語の長い記事タイトルに対して文字が大きい

ここで問題になったのは、「他のサイトと似ている」こと自体ではない。

誰のサイトなのか、何を読めるのか、どこから記事へ進めばよいのかが弱かったことの方が大きい。

その後、サイト名を「ゆまラボ」に変更し、記事一覧をカード化し、カテゴリや連載への入口を追加した。さらにロゴも入れている。

AIで作ったロゴをWebサイトへ使うまで―ゆまラボで確認した文字・サイズ・ヘッダー表示 では、画像だけへサイト名を任せず、ロゴの横にHTMLの「ゆまラボ」を残した。画像は識別用のマーク、文字は読ませる情報という役割分担になる。

サイトの個性を考えるときも、この分け方は使いやすい。

「他にはない見た目」を先に作るのではなく、次の情報が伝わる状態を先に作る。

  • 何のサイトか
  • どんな記事があるか
  • どこから探せるか
  • どのサイトを見ているか

ここまで分かったうえで、色、ロゴ、画像、文章の雰囲気を追加すればよい。

個性を出しやすい場所と、共通化した方がよい場所#

Webサイトの全部に同じ強さで個性を入れる必要はない。

ゆまラボの現在の構成を基準にすると、独自性を出しやすい場所と、一般的な操作を残した方がよい場所は分けられる。

横にスクロールできます
場所個性の出しやすさ理由
サイト名・ロゴ高い他サイトとの識別に直接使える
ヒーローの文言高いサイトのテーマを短く伝えられる
配色高い操作方法を変えずに印象を変えられる
アイキャッチのテイスト高い一覧やSNS上で同じサイトの記事と分かりやすい
記事の文体高いUIを変えずにサイトらしさを出せる
カードの余白・線・角丸中程度見た目は変えられるが、情報の優先順位は維持したい
ヘッダーの主要ナビ低い独自名称や独自配置が増えると探しにくくなる
リンクやボタンの操作低い見ただけで押せることが分かる方がよい
検索・ページ送り低い一般的な操作方法から外れる理由が少ない

現在のゆまラボも、ヘッダーにはHome記事一覧カテゴリ連載タグAboutといった普通の名称を使っている。一方、サイトの識別はロゴ、青白い配色、ヒーロー、アイキャッチ側へ寄せている。

この考え方はアクセシビリティとも相性がよい。

WCAG 2.2の「Consistent Navigation」では、複数ページで繰り返すナビゲーションは相対的な順序を一貫させることが求められている。同じく「Consistent Identification」では、同じ機能を持つコンポーネントを一貫して識別できるようにすることが示されている。

見た目の個性と、操作の予測しやすさは別の話になる。

個性を強くしすぎると起きる問題#

個性を増やす方向は際限がない。独自フォント、独自アイコン、特殊なメニュー、アニメーション、背景動画、スクロール演出、カードごとの異なるレイアウト。足そうと思えばいくらでも足せる。

問題は、そのほとんどが無料ではないこと。

操作方法まで独自化すると学習が必要になる#

サイトを開くたびに、メニューの意味やボタンの挙動を考えさせる状態は避けたい。

たとえば記事一覧へのリンクを「読む」「探索する」「ラボノート」のような独自名称へ置き換えると、雰囲気は出る。一方で、初めて来た人はどこへ移動するのか判断しにくくなる。

同じ機能なのにページごとにアイコンや名前を変えるのも扱いづらい。

個性のために操作規則まで変更すると、訪問者が他サイトで身につけた経験を使えなくなる。

配色を優先すると文字が読みにくくなる#

ブランドカラーを決めると、その色をどこにでも使いたくなる。

淡い水色に薄いグレーの文字、濃い青の上に細い文字、といった組み合わせは見た目がまとまっていても、本文やボタンとして読みにくい場合がある。

WCAG 2.2のコントラスト基準では、通常の文字は背景とのコントラスト比4.5:1以上が基本になる。ロゴ自体は例外だが、リンクや操作部品まで「ブランドだから」で薄くすると別の問題になる。

個性を出す色と、読むための色は分けて考えた方が扱いやすい。

PCで成立してもスマホで破綻しやすい#

デザイン要素が増えるほど、画面幅ごとの例外も増える。

大きなヒーロー、左右に分かれた説明、長い装飾見出し、重なったカードなどは、PCでは見栄えがよくてもスマホでは縦方向へ押し込む必要がある。要素同士を重ねている場合は、折り返しだけでは済まない。

ゆまラボでは実際に、ブラウザを最小幅まで縮めても崩れない?ゆまラボのレスポンシブ耐久テスト としてトップ、記事本文、連載一覧、カテゴリ一覧を狭い幅まで確認している。

独自レイアウトを追加するたびに、同じ確認対象が増えると考えた方がよい。

装飾は表示性能にも影響する#

個性を出すために大きな画像や動画、Webフォント、JavaScriptアニメーションを増やせば、読み込み量も増える。

特にヒーロー画像は画面上部で大きく表示されるため、Largest Contentful Paint(LCP)の対象になりやすい。web.devでは、実ユーザーの75%以上でLCP 2.5秒以下を「良好」の目安としている。

個性を出すために追加した画像が、そのページで最も大きい要素になれば、画像サイズ、読み込み開始のタイミング、圧縮方法まで性能へ関係してくる。

装飾を増やす前に、そこまでして残したい要素かを見る必要がある。

CSSとコンポーネントの例外が増える#

運用面ではここがかなり大きい。

記事カードは共通、ボタンも共通、見出しも共通なら、一度変更すれば複数ページへ反映できる。

「トップだけ特別」「カテゴリだけ別」「この連載だけ別色」「このカードだけ別の角丸」が増えると、あとから1か所を変えたつもりでも別ページへ影響する。レスポンシブ対応もそれぞれ確認することになる。

個性を作るためのCSSが、数か月後には修正しにくい例外の集合になることもある。

サイトを長く運用するなら、見た目の差より共通部品を維持できるかの方が効いてくる。

記事よりデザインの方が強く見える#

技術ブログでは、最終的に読んでもらいたいのは記事本文。

トップページで巨大なビジュアルが画面の大半を使い、スクロールしても演出が続き、記事タイトルが小さく埋もれるなら、サイトの目的と逆になる。

ゆまラボのヒーローも、現在はサイトテーマを短く示す役割に限定している。その下にはすぐ連載や記事への入口が続く。

個性を見せる領域が、コンテンツへの入口を押し下げないことはかなり重要になる。

デザイン変更時の修正範囲が広がる#

個性的な装飾をページごとに作ると、将来の変更が難しくなる。

ロゴ、カラー、アイキャッチのルール、独自アイコン、背景パターン、特殊なカードが全部別々に作られていると、サイトの雰囲気を変えたいときに一括で変更できない。

古い記事のスクリーンショットやアイキャッチだけ前のデザインが残り、一覧で新旧が混ざることもある。

個性を出すほど、「どこを共通ルールとして持つか」も同時に決めないと運用コストが増える。

ゆまラボで残したい個性#

ゆまラボでは、サイトを始めた直後より明らかに見た目の要素が増えている。

ただ、今後さらに個性を出すとしても、操作そのものを独自化する方向には寄せなくてよさそうだ。

残したいのは次の部分になる。

サイトのテーマが分かるヒーロー。

「WEB制作 × AI」「つくる、試す、共有する」という短い文で、何を扱う場所かを先に伝える。

同じサイトの記事だと分かる画像の方向性。

アイキャッチは白から薄い水色を基調にし、ネイビー、ブルー、シアンを中心にする。記事ごとのテーマは変えても、一覧で見たときの温度感は合わせる。

ロゴとサイト名。

マークだけに意味を詰め込みすぎず、横に文字として「ゆまラボ」を残す。画像が小さくなってもサイト名は読める。

実作業をそのまま残す記事の書き方。

デザイン以上に、実際に試した内容、失敗、エラー、設定、結果を残す方がサイト固有の情報になる。他のサイトと同じ青色を使っていても、同じ作業記録にはならない。

逆に、ヘッダー、記事一覧、パンくず、検索、ページ送りなどは、無理に変わった操作へしない。

個性は「普通と違うものを増やすこと」ではなく、何を見ればゆまラボだと分かるかを絞ることとして考える方が扱いやすい。

サイト名、色、ヒーロー、画像、文章。このあたりに一貫性があれば、ボタンやナビゲーションまで特殊にする必要はない。

個性を追加するときに見る基準#

新しいデザインを足したくなったときは、「目立つか」より先に次の4点を見る。

  1. サイトを見分けるために役立つか
  2. 記事を探す操作を変えていないか
  3. スマホでも同じ意味のまま表示できるか
  4. 共通部品として今後も維持できるか

4つとも問題がなければ、個性として残しやすい。

反対に、特殊な操作を覚えないと使えない、本文より装飾が目立つ、ページごとに別実装が必要になるなら、個性より負担の方が大きい。

Webサイトに個性は必要。ただし、強く出す場所は選んだ方がよい。

ゆまラボの場合は、操作を変えるより「見分けられること」「扱っているテーマが分かること」「記事そのものに実体験があること」を残す方が、ブランディングと使いやすさを両立しやすい。

参考#